2009年2月22日の日経新聞に、米国株式市場の時価総額が、2007年10月のピーク時と比較して930兆円減少した(GM,フォードは1$台!!)との報道があった。
株式で運用する個人の多い米国では、逆資産効果を通じて、消費低迷、物価下落、生産低迷などデフレ突入の懸念がたしかなものとなっってきた。
それでは、日本はどうでしょうか?
日本の東証の時価総額は、2007年3月末に、555兆3千億円でした。一方、それから、現在までに日経平均株価は、1728円から794円まで半分以下に低下している。
日本でも、300兆円近く株式時価総額の減少があった。
日経平均の時系列データ
米国の証券市場の規模は、主要株式市場の国際比較でわかるように、東証の3倍強であるので、日米ともに同程度の時価総額の減少が発生したのである。
やはり、デフレが再燃するのでしょうか?
デフレを続けていれば、公的債務はますます膨らみ、円高で輸出産業が衰退し、国内停滞産業が保護された形になり、雇用は全体的に減少し、金融機関も個人も資産を食い潰していくことになる。またキャピタルフライトなども発生しやすくなる。
現在、緊急の金融緩和で、国債などに資金が流れかつ利回りの低下(価格の上昇)が起こっている。デフレ脱出こそが構造改革であると思うがその道筋が見えていなくて、足元の火の粉を振り払うのに精一杯の状況でしょう。
よく考えてみれば、不良資産は所得の分配の問題にすぎない。
需要減で生産資本が毀損し、株価価値の暴落したゼネラルモーターズ(GM)の場合でも、従来の見方ならば、企業経営の失敗であり、損失は自ら被ることで、政府の資金注入などで生き残るのはモラルハザードであろう。
アジア経済危機の折、世界3位の香港のペレグレン証券が破産している。「倒産は金融システムに与える影響が甚大なので支援して欲しい」と金融監督庁に要請したが香港金融当局は「金融システムについては、御社の心配に及ばず」と支援を断っている。民間の失敗に個別に政府が支援をあたえるとモラルハザードが発生するだけでなく、資金流動を捻じ曲げてしまう。
最近、韓国が大変な状況である。日本と関係深い国なのでなんとか、良くなって欲しいが、台湾と比較して何故韓国は影響を多く受けたか?。
台湾は財閥が少なく中小企業がおおく、資本市場から資金を直接調達している。一方、韓国は、間接金融が発達し、大企業が銀行から借入金で投資などしている。もし金融危機が起これば、韓国は国が企業支援を行うが、台湾は放置されると見る国際的投資家は多いでしょう。
数年前、韓国に国際的な投資資金が大量に流れ込み、今回は急速に引き上げているという。韓国は主要企業の国家による救済をたびたび実施してきた国なので、海外投資家が安心して投機したとも言えよう。
昔、IMFの介入でひどいめにあった国がある。韓国もそうですが、タイは本当にひどい目にあっている。大量の国債流入資本がいっせいに引き上げられ、通貨暴落をふせぐために買い支え、外貨準備を失ってしまった。そこでIMF融資を政府保証で依頼したが、結局98年8月に170億ドルの借金を背負ってしまった。外貨準備の喪失と併せて、政府は570億ドルの被害を一瞬にしてこうむってしまった。タイGDPの30%の被害である。
国際資金流動が過剰であったここ5年の間に、
1.民間企業は過大な設備投資や雇用を抱えた
2.銀行や国際資本はハイリスクな商品を売り運用した
3.個人も株式や証券の値上がり益を享受した
これが逆回転しただけであり、まさに所得分配の問題である。
この被害?と救済?は、民間の出来事なので、政府が直接支援することは、モラルハザードを生むでしょう。
米国は、仕組み債で海外から住宅資金を集めて、高価な住宅を貧しい人々にまで、売ってきたが今回のサブプライム問題で、破綻した。
高価な住宅購入者は損失を被り、担保証券を購入した世界中の個人や金融機関は損失が発生した。米国には値下がりした売れない住宅が残り、資本は一斉に引き上げた、ドルに反流したので、ドルの為替はさほど下がっていない。
ハーバードのバロー教授は、IMFはIMH(International Moral Hazaard)
と呼ぶべきであると言っている。ノーベル経済学賞のフリードマン教授も、国際的な危機が起きればIMFが救済し、海外投資のかなりの部分が返済されていると批判している。国民や企業化に救済という名の返済を義務づけることで、投資家を守ったことを批判している。
米国も、不良資産を政府が買い取る案については、その額があまりに巨額(700兆円)にもなるので、驚いてやめてしまった。本当は、民間の損失を政治が直接救済するモラルハザードを恐れたのかもしれません。
直接救済でなく、
政府が経済恐慌、デフレを防ぐ対策は、
経済学の教科書では
1.所得減税(法人・個人)
2.政府投資
3.消費刺激(消費税の減税、定額給付金?)
4.金融緩和(低利な短期マネーの大量供給)
5.為替政策
でしょう。日本では、公共投資と定額給付金が話題になっている。金融緩和もFRBの資産の増加傾向からみても、マネーサプライからみても少ないようです。
長期には、民間に資金を流れるようにして、技術革新や生産性の向上を図るのが本道です。
米国 株式時価総額930兆円の減少:デフレ突入!
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昨年、ノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のポール・クルーグマン教授は、中国紙『21世紀経済報道』のインタビューに対し、「中国は米ドルのわなにはまった。米国資産を大量に取得したのは賢明な策略ではなかった。中国は(米国債投資で)最終的に20-30%の損失を被ることになる。途中で米国債を売却したとしても相当な損害は避けられない」と指摘した。