人類の起源と日本人の祖先 1:遺伝子進化学

遺伝子DNAで人の進化が解明されるようになった。最新の科学的な知見なので、要点を整理したい。参考:DNA人類進化学
(方法)
1.個々の染色体のDNA(デオキシリボ核酸)は、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)という四種類の塩基の配列によって遺伝情報が書かれており、ヒトの染色体上のDNAには約三〇億個の塩基が配列されている。別の種(例えばチンパンジー)のDNAの塩基配列と比較すると、二つのDNAの間で塩基が違っている場所があり、この違いは霊長類の進化過程で、どちらかの種で突然変異によって塩基の置き換わり(塩基置換)が生じ、それが種の内部で定着したものである。
2.ミトコンドリアDNA:細胞質にあるミトコンドリアというエネルギー産生や呼吸代謝の役目をもつ特殊な小器官の中にも小さなDNAが存在し、これをミトコンドリアDNAと呼んでいる。ミトコンドリアDNAは一万六五六九塩基で構成された非常にコンパクトな環状のDNAで、全部で三七個の遺伝子が存在することが明らかとなった。
3.短時間での塩基置換:ミトコンドリアDNAは核DNAに比べて塩基置換の起こる速度が五倍から一〇倍速いことわかった。比較的短い進化的時間の中で生じたDNAの変異を効率よく測ることができる。
4.母性遺伝:ミトコンドリアDNAは、母親のものだけが子供に伝わり、父親のミトコンドリアDNAは次世代にはまったく関与しないという、核DNAとは異なった遺伝様式をとる
5.ミトコンドリアDNAの相違がいつ頃発生したかが予想できるので、人類の発生時期を知る事ができる。また、共通性から、共通の母をもつ種族を特定できる。
(これまでの知見)
1.ゴリラとチンパンジーの分岐が 656万年±26
2.チンパンジーとヒトの分岐が  487万年±23
3.その後、アフリカで独自の進化を示した祖先は、ホモ・エレクタスとなった。人類進化の最後の舞台に登場したのが、ホモ・サピエンス。
4.ホモサピエンスが、アフリカ人の祖先とそれ以外の祖先に分岐したのが14.3万年±1.8 である。
5.ヨーロッパ人と日本人の共通祖先の年代(T2)は、七万年前±1.8である。
6.旧猿人(北京原人やジャワ原人)は、日本人の祖先ではない。
宝来らによる分析から、アフリカ類人猿のなかではゴリラがまず分岐し、その後、約490万年前にヒトの祖先がチンパンジーの祖先と分かれたようだ。
最も古い時代に分岐したヒトであるウガンダ人とヨーロッパ人や日本人の違いはそれほど大きくはなく、それらの分岐は、たかだか一四万年前であった。
アフリカ人のミトコンドリアDNAが最も多様性に富んでいる。このことは、かなりの世代にわたってミトコンドリアDNAの多様化がアフリカで起こったことを示している。
このことから、「すべての現代人の共通祖先の起源の地はアフリカであり、それはたかだか14万年前の出来事である」(アフリカ起源)とのこと。
気候学の知見によれば、14万年前ごろ寒冷であった氷河が溶け始めたという。例えば、インドネシアのまわりには、広大なスンダランドがあった。
スンダランドとは、現在タイの中央を流れるチャオプラヤー川が氷河期に形成した広大な沖積平野である。現在ではタイ湾から南シナ海へかけての海底に没しており、マレー半島東岸からインドシナ半島に接する大陸棚がそれに当たる。氷河期に、海面が100メートル程度低くなり広大な平野であった。紀元前12000年頃から紀元前4000年にかけて約8000年間にわたる海面上昇により海底に没した。中国と韓国、日本に囲まれた黄海も平野であった。ここは、スンダランドと平野で繋がっていた。
このことから、温暖化とともに、われわれの祖先はアフリカを離れ、ヨーロッパやアジアに移って、それぞれの進化を進めた。日本人は、スンダランドを経由してやってきたのではなかろうか(推測)。
(日本人の祖先)
日本の三集団(本土日本人、琉球人、アイヌ)と韓国人や中国人からなる二九三人の東アジア人における、ミトコンドリアDNAの塩基配列のデータの詳細な分析
これによれば、本土日本人のミトコンドリアDNAは、大陸人に由来する割合が大きく、弥生移行に渡来したヒトの影響が大きい。本土日本人は、混血である。縄文人と渡来人の遺伝子を一対二の割合でもっている。
また、アメリカインディアンのミトコンドリアDNAは、現代日本人の一部と共通であったとのこと。ベーリング海を渡って北米に行ったものがいるとのこと。

4 thoughts on “人類の起源と日本人の祖先 1:遺伝子進化学

  1. ミトコンドリア・イブ

    日本人の母系:9人の母
    母系にのみ受け継がれるミトコンドリアDNAから母とその年代がわかったようです。
    1.日本人の34%:バイカル湖の西で6万年前に誕生。アジア最古の母。
    2.日本人の15%:東中国で4万年前に誕生。日本の縄文人のルーツ
    3.日本人の15%:中国で6万年前に誕生。海路で日本やオセアニア、環太平洋に広く分布。日本人の15%
    4.日本人の7.5%:東シベリアで3万年前に誕生。南下し中国、朝鮮半島、中央アジアに分布。
    5.日本人の6%:バイカル湖畔で2~3万年前に誕生。東アジアに達し、ベーリング海を渡った。
    6.日本人の5%:東南アジア付近で4~5万年前に誕生。朝鮮半島を経由して日本へ。
    7.日本人の7%:東中国で2~3万年前に誕生。縄文以降の「渡来人」
    8.日本人の3.2%:北東アジアで3~4万年前に誕生。シベリアからベーリング海を渡り、北米から南米まで長距離を移動したグループ。西は北欧にまで
    9.日本人の3.4%:ヒマラヤの山岳地帯で4万年前に誕生。中央アジア、東アジアに分布。

  2. ミトコンドリア・イブ

    世界何十億人のルーツの母は、35人。これだけ女性の遺伝子しか残っていないことになるが、そのうち9人の遺伝子が日本に来ている。ヨーロッパでは7人の母なので、日本人は混血の度合いが高いか?

  3. Y-DNA 男系で見る祖先

    Y-DNAは、父から男子にしか伝わらない為、基本的に父と子のDNAは同じものが遺伝する。突然変異を起こした時期を調べる事で移動したグループを特定可能という。
    日本固有遺伝子を持つ男性が多いようです。3~5割が日本固有(縄文系)で、残りが弥生系3割と江南系1割と漢族系2割がしめます。北方系由来は5-6%と少ない。
    男系でみると朝鮮民族と日本人は、遺伝的には遠いようです。日本人の母系:9人の母と比較すれば面白い。
    朝鮮民族は、漢族系が4割、北方系由来が3割、弥生・江南由来は1割だそうですが、まだデータの量など精度が低いらしい。
    http://www26.atwiki.jp/crescent_castle/pages/56.html

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