伝統と技術進歩:釣り竿と釣り糸の日米競争
日本は海洋国家であり、日本人は世界でも珍しい釣りをする民族である。
釣りの技術も古くから発達してきた。釣りの最も古い記録では、古事記の海幸彦・」山幸彦の釣り針と、神功皇后が裳の糸を使って筑紫で鮎を釣る話がある。
たぶん絹糸であろうと予想されるが、繊細な釣りが古くから在った証拠である。
また、釣竿も竹が使われた。チヌ用の庄内竿や紀州竿は有名であり、釣りは藩主も勧める
スポーツでもあった。
理想の竿とは、「振込みのときは針先までが竿であり、取り込みのときは手元までが糸であるような調子(俳優山村聡の説)」の竿である。日本の自然が良い竹を育て、和竿の名竿師が、この調子の竿を創り伝統を守ってきた。
現在の竿は、カーボンロッドであり、アクリル樹脂を炭素化した高分子炭素を素材としている。
竹やグラスロッドより強く、弾性があり、軽いのでほとんどがこの竿となった。
一方、釣り糸はいまでもテグスとも言われるが、天蚕蛾(ヤママユガ)の体内から取れる糸のことであった。
1匹で、1.5m程しか取れないテグスは、明治13年に市販され、金よりも値段が高かったが、ナイロンが出現するまで愛用された。
日本の自然と技術が生み出した釣り用の竹もテグスも海外に輸出された。
この竿と糸が、技術進歩した最大の要因は、太平洋戦争であった。
釣り糸は、米国向け絹糸輸出がストップしたため、米国では落下傘部隊が使用していた
ナイロンロープを使用するようになった。デュポン社と東レのナイロンとレーヨンの技術開発と特許争いは釣り糸の覇権競争でもあった。
竿についても、戦争で竹の輸入が出来なくなった米国が困った。釣り好きのパイロットが軍用機の防火布のガラス繊維を鉄パイプに巻きつけ樹脂で接着剤で固めて使うことでグラスロッドが使われるようになったと言われている。
このように米国で発明された新素材の竿と糸であったが、その後の技術進歩をリードしたのは日本であった。
魚種別に多様な糸と竿を使い分ける日本の伝統が、さまざまな竿と糸を開発し世界をリードしてきた。ニーズ主導の
繊細・軽量な竿と糸、そして電気うき(超小型バッテリー)の開発は、日本人の得意とする所であった。また、最高のガイドも日本製である。
公平にみれば、ちょっと日本が弱いところもある。繊細な調子の長竿は日本の独壇場であるが、短竿とリールによる遠投ルアー釣りの伝統が比較的弱い。そのためルアーやリールには海外にも良いものが多い。
このように考えて来ると、海洋民族としての伝統的生活と日本の自然が、世界に通用する技術と製品を生み出してきたことが良くわかる
技術は生活と自然が生み出すものかもしれない。自然を大切にすると共に、現在の生活の諸問題を解決していくことが技術進歩でもある。たとえば、道路の渋滞と判り難い道路網(馬車道の伝統のない)が、現在のカーナビやITSを発展させている。いまは不況であるが、足元の諸問題を着実に解決していくことが、ひいては産業立国を支えていくことになろう。不況に悲観せずに、頑張りたい。
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