延喜式神名帳、名神大社、官幣大社

名神大社(みょうじんたいしゃ)とは、日本の律令制下において、名神祭の対象となる神々(名神)を祀る神社である。古代における社格の1つとされ、その全てが大社(官幣大社・国幣大社)に列していることから「名神大社」と呼ばれる。『延喜式』巻3の「臨時祭」の「名神祭」の条下(以下「名神祭式」という)と、同巻9・10の「神名式」(「延喜式神名帳」)に掲示され、後者の記載に当たっては「名神大」と略記されている。延喜式神名帳(えんぎしき じんみょうちょう)とは、延長5年(927年)にまとめられた『延喜式』の巻九・十のことで、当時「官社」に指定されていた全国の神社一覧である。

延喜式
三代格式のうちほぼ完全な形で残っているのは延喜式だけであり、細かな事柄まで規定されているため、古代史研究のうえで重視されている。
905年(延喜5年)、醍醐天皇の命により藤原時平らが編纂を始め、時平の死後は藤原忠平が編纂に当たった。『弘仁式』『貞観式』とその後の式を取捨編集し、927年(延長5年)に完成した。その後改訂を重ね、967年(康保4年)より施行された。

延喜式神名帳に記載された神社、および現代におけるその論社を「延喜式の内に記載された神社」の意味で延喜式内社、または単に式内社(しきないしゃ)、式社(しきしゃ)といい、一種の社格となっている。本来「神名帳」とは、古代律令制における神祇官が作成した官社の一覧表を指し、官社帳ともいう。国・郡別に神社が羅列され、官幣・国幣の別、大社・小社の別と座数、幣帛を受ける祭祀の別を明記するのみで、各式内社の祭神名や由緒などの記載はない。延喜式神名帳とは、延喜式の成立当時の神名帳を掲載したものである。延喜式神名帳に記載された神社(式内社)は全国で2861社で、そこに鎮座する神の数は3132座である。

式内社の中には、祈年祭以外の祭にも幣帛を受ける神社があり、社格とともに記された。

名神 – 名神祭(特に霊験灼かな名神を祀る臨時祭)が行われる神社。すべて大社、よってこれらを名神大社、略して名神大ともいう。
月次 – 月次祭(6月と12月の年2回行われる祭)に幣帛を受ける神社。
相嘗 – 相嘗祭(新嘗祭に先立ち新穀を供える祭)が行われる神社。
新嘗 – 新嘗祭(毎年11月に行われる1年の収穫を祝う祭)に幣帛を受ける神社。

別表神社
昭和21年(1946年)2月2日の神社の国家管理の廃止に伴い、公的な社格の制度(近代社格制度)が廃止されたため、それに代わるものとして昭和23年(1948年)に定められた。社格制度廃止後は、全ての神社は対等の立場であるとされた(伊勢神宮を除く)。しかし、旧の官国幣社や一部の規模の大きな神社については、神職の進退等に関して一般神社と同じ扱いをすると不都合があることから、「役職員進退に関する規程」において特別な扱いをすることと定めている。その対象となる神社が同規程の別表に記載されていることから、「別表に掲げる神社」(別表神社)と呼ばれる。

名神大社

官幣大社
官幣大社(かんぺいたいしゃ)は日本において官(朝廷、国)から幣帛乃至幣帛料を支弁される神社。
令制時代の官幣大社に就いては「延喜式神名帳#式内社の社格」参照
1 加茂別雷神社 京都府 明治4年5月14日
2 加茂御祖神社 京都府 同上
3 石清水八幡宮 京都府 同上
4 松尾神社<松尾大社> 京都府 同上
5 平野神社 京都府 同上
6 稲荷神社<伏見稲荷大社> 京都府 同上
7 大神神社 奈良県 同上
8 大和神社 奈良県 同上
9 石上神宮 奈良県 同上
10 春日神社<春日大社> 奈良県 同上
11 広瀬神社<廣瀬大社> 奈良県 同上
12 龍田神社<龍田大社> 奈良県 同上
13 丹生川上神社 奈良県 明治4年12月13日
14 枚岡神社 大阪府 明治4年5月14日
15 大鳥神社 大阪府 同上
16 住吉神社<住吉大社> 大阪府 同上
17 生国魂神社 大阪府 同上
18 広田神社 兵庫県 同上
19 氷川神社 埼玉県 同上
20 安房神社 千葉県 同上
21 香取神宮 千葉県 同上
22 鹿島神宮 茨城県 同上
23 三島神社<三嶋大社> 静岡県 同上
24 熱田神宮 愛知県 同上
25 日吉神社<日吉大社> 滋賀県 同上
26 日前神宮 和歌山県 同上
27 国懸神宮 和歌山県 同上
28 出雲大社 島根県 同上
29 宇佐神宮 大分県 同上
30 霧島神宮 鹿児島県 明治7年2月15日
31 伊弉諾神社<伊弉諾神宮> 兵庫県 明治18年4月22日
32 香椎宮 福岡県 同上
33 宮崎神宮 宮崎県 同上
34 橿原神宮 奈良県 明治23年3月20日
35 平安神宮 京都府 明治27年6月29日
36 気比神宮 福井県 明治28年1月4日
37 鹿児島神宮 鹿児島県 明治28年10月19日
38 鵜戸神宮 宮崎県 同上
39 浅間神社<富士山本宮浅間大社> 静岡県 明治29年7月8日
40 建部神社<建部大社> 滋賀県 明治32年7月7日
41 札幌神社 北海道 同上
42 宗像神社<宗像大社> 福岡県 明治34年11月7日
43 吉野神宮 奈良県 明治34年8月8日
44  (台湾神社) 台湾 明治33年9月13日
45  (樺太神社) 樺太 明治43年7月29日
46 月山神社 山形県 大正3年1月4日
47 多賀神社<多賀大社> 滋賀県 同上
48 阿蘇神社 熊本県 同上
49 筥崎宮 福岡県 同上
50 八坂神社 京都府 大正4年11月10日
51 日枝神社 東京都 同上
52 竃山神社 和歌山県 同上
53 熊野坐神社<熊野本宮大社> 和歌山県 同上
54 熊野速玉神社<熊野速玉大社> 和歌山県 同上
55 諏訪神社<諏訪大社> 長野県 大正5年12月12日
56 明治神宮 東京都 大正9年11月1日
57 丹生津比売神社 和歌山県 大正13年2月11日
58  (朝鮮神宮) 朝鮮 大正14年10月15日
59 近江神宮 滋賀県 昭和13年5月1日
60  (関東神宮) 関東州 昭和13年6月1日
61  (扶余神宮) 朝鮮 昭和14年6月15日
62  (南洋神社) 南洋諸島 昭和15年2月11日
63 白峰神宮 京都府 昭和15年8月1日
64 赤間神宮 山口県 同上
65 水無瀬神宮 大阪府