仁徳天皇と吉備、淡路島

仁徳天皇
其の嶋より伝ひて、吉備国に幸行(い)でましき。
尓(しか)して黒日売、其の国の山方の地に大坐(おおま)しまさしめて、大御飯(おおみけ)を献(たてまつ)る。
ここに、大御羮(おおみあつもの)を煮むと為て、其地(そこ)の菘菜(あおな)を採む時に、天皇、其の嬢子(をとめ)の菘を採む処に到り坐し、歌ひ曰りたまはく、

 山方に 蒔ける青菜も 吉備人と 共にし摘めば 楽しくもあるか

天皇の上り幸でます時に、黒日売の献れる御歌に曰ひけらく、

 夜麻登幣迩、尓斯布岐阿宜弖、玖毛婆那禮  曾岐袁理登母、和禮和須禮米夜

 倭辺(やまとへ)に 西風(にし)吹き上げて 雲離れ 退(そ)き居(を)りとも 我忘れめや