漆の歴史、世界最古

垣ノ島遺跡(かきのしまいせき)

北海道函館市に所在する縄文時代の遺跡。道内での同時代の遺跡として最大規模であり、早期前半(約9000年前)の墓制、駒ヶ岳噴火による集落断絶、後期初頭の盛土遺構から後期後半(約3,500年前)に至るまでの縄文集落の変遷と生活痕跡が確認でき、文化庁が定める史跡名勝天然記念物の史跡に指定されている。

縄文時代の早期の土坑墓から約9000年前の漆による装飾品としては世界最古の副葬品が出土している。

世界最古の漆工芸の装飾品

土壙墓の埋葬された痕跡がらを塗った赤い糸で編んだ装飾品が発見され、漆による副葬品としては中国の河姆渡遺跡で発掘された漆椀(約6200年前)よりも古い世界最古の漆工芸品(約9000年前)であることが判明した。髪飾り、腕輪、肩当てのようなものが、体の部位にあたる土坑墓中の地点から計6点が発見されている。

 これまでは揚子江下流から出土した物が約7000年前のもので、世界最古といわれていたのですが、その歴史を書き換えた発見でした。

 又、漆の起源の研究として、漆のDNA分析の結果、中国の漆と日本の漆は異なる種類であり、日本の漆は中国漆の子孫ではないことも報告されています(青森市三内丸山遺跡から出土した漆の分析から、静岡大学佐藤洋一郎助教授の発表)。



縄文時代前期(6000-5000年前ころ 福井県鳥浜貝塚遺跡から出土した「赤色漆塗櫛」(黒漆彩文/べんがら/赤漆 黒漆塗り)が美しさを今に伝えており、重要な作品です。 出典:「うるしの文化」所蔵:福井県立若狭歴史民俗資料館

新潟黒川村の分谷地遺跡 

平成12・13年の発掘調査の結果、住居址・土壙・捨場遺構のほか、土器・土偶・石器・漆器など縄文中期後葉から後期前葉にわたる加工遺物が検出された。
叉弥生時代の土器・再生墓なども見つかっている。現在も段丘面縁辺部の斜面から清水が湧くほどで、粘土質の土壌に冷たい地下水が染み込んでいたことで、工芸的漆塗り木製品が37点も整った形で出土したことは県内では前例がなく、全国的にも珍しいと云う。 

 新潟県黒川村の分谷地A遺跡で2001年に出土した縄文時代後期の漆器に詰まっていた土からニワトコ、タラノキなど26種類の植物の種が見つかり、漆器に果実酒が入っていた可能性が高いことが28日までに分かった。  黒川村教育委員会によると、青森市の三内丸山遺跡などから果実酒のしぼりかすが出土しているが、容器に入った状態で見つかるのは珍しく、縄文時代の酒器の解明にも役立つという。  分析した国立歴史民俗博物館の辻誠一郎教授は「この遺跡は祭祀(さいし)場と考えられ、祭りで悪魔をはらう目的で回し飲みしたのではないか」と話している。  辻教授によると、ニワトコの実の皮には発酵に最適なこうじが大量に発生するため、縄文人の酒造りはニワトコが主原料だったという。  漆器は幅26センチ、高さ15センチの水差しで、約4000年前のものとみられる。

縄文時代後期のものとされる木胎漆器で、漆塗膜について炭素14年代測定をおこなったところ、実年代に補正して1800±120cal BCすなわち今からおよそ3800年前のものとわかりました。

 

漆塗り黒色木製水差し 

横幅約26cm弱・高さ約15cmの木製ランプ形容器で、左右均斉の取れた美しい曲線を呈した優品 

 
朱漆塗りの木製ランプ容器 

横幅25.5cm・高さ約15cmの朱漆塗りの木製ランプ形容器で、地下水で空気が遮断された状態であったため、鮮やかな朱色がそのまま残されていた。片方に注ぎ口、一方に“8”の字状彫刻入り把手が付けられている。